【運転免許事典】 放置違反金 目次
放置違反金
放置車両の運転者が、違反者として出頭せずに反則金を納付しなかった場合などには、「車両の使用者」に対して放置違反金が科されます。
放置違反金は、あくまでも違法駐車をした運転者が、違反者としての責任を果たさないときに科されるものですから、運転者が警察に出頭して反則金を納付した場合などには科されません。
放置車両の運転者として出頭して反則金を納付する場合には違反点数が付されますが、放置違反金を納付する場合には違反点数は付されません。
放置違反金の対象となる車両の種類は次の通りです。
放置違反金は「車両の使用者」に対して科されます。
「車両の使用者」とは、『車両を使用する権限を有し、車両の運行を支配、管理する人であり、車両の運行について最終的な決定権を有する人』(法人を含む)のことで、通常は自動車検査証に記載されている使用者と同じ人です。(自動車検査証の使用者の欄が『 * * * 』となっているものは、所有者と使用者が同一であることを示しています。)
具体的には次の様な人が「車両の使用者」となります。
ただし、自動車検査証に使用者として記載されている人であっても、車両を盗まれた人や、すでに車両を売却した人などは車両の運行支配権を失っているので、放置違反金は科されません。(この様な場合には弁明の機会に弁明することができます。)
違法駐車した放置車両には、放置車両であることを確認する『放置車両確認標章』が取り付けられます。
「車両の使用者」や違法駐車をした運転者は、この標章を取り除いてかまいません。
『放置車両確認標章』が取り付けられると、「車両の使用者」に対して『弁明通知書』が送付されます。
ただし、違法駐車をした運転者が警察に出頭して、反則金を仮納付した場合などには『弁明通知書』は送付されません。
放置車両の運転者が、違反者としての責任を果たす場合には放置違反金は科されないからです。
『弁明通知書』を送付された「車両の使用者」は、提出期限までに弁明書を提出することができます。車両を盗まれた人などは、弁明書や自己に有利な証拠を提出することができます。
弁明が認められれば放置違反金は科されません。
また、弁明書を提出することなく、早く終了させたい人は『弁明通知書』と一緒に送付された納付書で放置違反金を仮納付することができます。
仮納付であっても、その効果は本来の納付と同じです。
放置違反金の仮納付は、弁明書の提出期限までにしなければなりません。
「車両の使用者」が放置違反金を仮納付した後に、違法駐車をした運転者が違反者として警察に出頭して、反則金を納付した場合などには、仮納付した放置違反金は「車両の使用者」に返還されます。
弁明書の提出期限が過ぎると、弁明書を提出しなかったり、提出しても弁明が認められなかった「車両の使用者」に対して放置違反金納付命令が出されます。
ただし、次のいずれかに該当する場合には放置違反金納付命令は出されません。
これは、違法駐車をした運転者が違反者としての責任を果たす場合には、放置違反金が「車両の使用者」に科されないためです。
納付命令は文書によって行われます。
具体的には『放置違反金納付命令書』が「車両の使用者」に送付されます。この文書と一緒に納付書が送付されますので、この納付書で放置違反金を納付期限までに納付することになります。
この、納付命令が出た後に納付するのが本来の放置違反金の納付です。
仮納付の規定は、『放置違反金納付命令書』の送付を省略するためのものです。
放置違反金を仮納付した「車両の使用者」に対しても、納付命令は出されます。
この場合には公示(公安委員会の掲示板に『放置違反金公示納付命令書』を掲示すること)によって納付命令が行われるため、納付命令書は送付されません。
公示によって納付命令が出されても、すでに放置違反金に相当する額を仮納付しているので、それ以上納付する必要はありません。
放置違反金納付命令が出た後に、上記(1)・(2)のいずれかに該当することとなった場合には、納付命令は取り消されます。
納付命令が取り消されると、すでに放置違反金を納付している「車両の使用者」には、納付した放置違反金が返還されます。
放置違反金の額は、違法駐車をした運転者が納付すべき反則金の額と同じで次の表の通りです。
(放置違反金の単位は千円)
『放置違反金納付命令書』を送付された「車両の使用者」が、納付期限までに放置違反金を納付しないときには、放置違反金の納付を督促する督促状が送付されます。
督促状が送付されてから放置違反金を納付するときには、延滞金と督促手数料を併せて納付しなければなりません。
この場合には、督促状と一緒に送付された納付書で、指定された期限までに納付することになります。
督促状を送付された「車両の使用者」が、指定された期限までに放置違反金等を納付しない場合には、財産の差押えなどの滞納処分が行われることになっています。
(しかし、1万円か2万円程度の金額を徴収するために、全ての滞納者に対して滞納処分が行われるとは思えません。滞納を繰り返すなど、悪質な場合に限って行われるのではないでしょうか。)
放置違反金等を督促によって納付したり、滞納処分によって強制徴収された後に違法駐車をした運転者が反則金を納付するなどして納付命令が取り消された場合には、納付又は徴収された放置違反金等は「車両の使用者」に返還されます。
また、督促状によって督促を受けた「車両の使用者」が、放置違反金の対象となった車両について車検を受けようとするときは、放置違反金等を納付したことを証する書面、又は滞納処分によって放置違反金等を徴収されたことを証する書面を提示しなければなりません。
つまり、放置違反金納付を督促された場合には、放置違反金等を支払わなければ車検が受けられないということです。
この車検拒否は、放置違反金納付の督促を受けた場合のことですから、放置違反金を仮納付した人や納付命令を受けて納付期限までに納付した人には適用されません。
従って、督促を受ける前に放置違反金を支払った人は、車検の際に放置違反金を納付したことを証する書面を提示する必要はないということになります。
督促の後に納付命令が取り消された場合にも、放置違反金を納付する必要がなくなるため、車検拒否は適用されません。
繰り返し放置違反金納付命令を出される「車両の使用者」に対しては、車両の使用制限命令が出されます。
使用制限命令の対象車両は一定期間、運転することも他人に運転させることもできなくなります。
使用制限命令の対象となる車両は、放置違反金の対象車両と同じです。
放置違反金納付命令を出された場合に、その納付命令に係る『放置車両確認標章』が取り付けられた日前6ヶ月以内に、同一の車両について、前歴の回数に応じて次の表に定められた回数以上、放置違反金納付命令(取り消されたものを除く)を受けていると、車両の使用制限命令が出されます。
運転禁止期間の基準が下の表の通りに定められています。
たとえば、過去1年以内に車両の使用制限命令を受けていない(前歴なし)人が、『放置車両確認標章』が取り付けられた日前6ヶ月以内に、同一の普通自動車についての放置違反金納付命令を3回受けていた場合、その普通自動車の運転禁止期間の基準は20日となります。
車両の使用制限命令が出されると、「車両の使用者」に対して『車両の使用制限書』が交付され、対象車両には『運転禁止標章』がはり付けられます。
この『運転禁止標章』は、運転禁止期間が終了するまで取り除くことはできません。
使用制限命令に従わず、運転禁止期間中に対象車両を運転したり他人に運転させた「車両の使用者」は、『3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金』に処されます。
また、運転禁止期間が終了する前に『運転禁止標章』を取り除くと、『2万円以下の罰金又は科料』に処されます。
放置違反金制度があることにより、違法駐車をして『放置車両確認標章』を取り付けられたときに、放置車両の運転者と「車両の使用者」が同一人物の場合、つまり「車両の使用者」が自分で違法駐車をした場合に、違反者として出頭して反則金を納付するか、又は出頭せずに放置違反金を納付するか、どちらか有利な方を選択できることになってしまっています。
反則金の額と放置違反金の額は同額ですから、金銭的負担は同じです。
反則金を納付する場合には、違反者として出頭しますので違反点数が付されます。違反点数が一定程度累積すると免許停止処分や免許取消処分を受けます。
一方、放置違反金を納付する場合には、違反点数は付されませんが6ヶ月以内に一定回数の放置違反金納付命令を受けると、車両の使用制限命令が出されます。しかし、車両の使用制限命令が出されても、一定期間その車両を使用できなくなるだけで、放置違反金を納付期限までに納付し、車両の使用制限命令に従っている限り「車両の使用者」に対する処分はありません。
つまり、反則金を納付するよりも放置違反金を納付する方が処分が軽いため、放置車両の運転者にとって有利ということになります。
従って、『放置車両確認標章』を取り付けられたときには、通常は違反者として出頭せずに放置違反金を納付し、現在累積点数はゼロだが車両が運転禁止になるのはどうしても困るという場合だけ、違反者として出頭して反則金を納付する、というようなことが可能となっています。(ただし違反者として出頭すると、免許停止などの前歴がある人は、1回の放置駐車違反で免許停止処分を受けることがありますので、注意が必要です。)
このように、違法駐車を繰り返す人にとって放置違反金制度は、上手に活用できる便利な制度ということになるのではないでしょうか。
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